【コラム】行政書士のしごと|ペンは剣よりも強し
(出所)イラストレーターNate BeelerさんのTwitter
「ペンは剣より強し」という言葉は、1839年にイギリスの政治家・小説家エドワード・ブルワー=リットンの戯曲『枢機卿リシュリュー』で用いられたのが最初といわれています。日本では、慶應義塾大学がエンブレムに使っていることでも知られています。
イギリスの格言なので、この言葉(the pen is mightier than the sword)の意味を、Cambridge Dictionary Onlineで調べてみると、「考えることや書くことは、権力や暴力を使うよりも人々により大きな影響力がある(thinking and writing have more influence on people and events than the use of force or violence)」と書かれています。この解釈から、ジャーナリズムの必要性を主張するときに使われたりもします。一方、枢機卿リシュリューは、「権力のもとでは、国家に刃向かう輩はいつでも逮捕状や死刑執行命令にペンでサインできる」という全く逆の意味で使ったという説もありますが、ここでは、一般的に使われているCambridge Dictionary Onlineの解釈に従います。
市民の権利義務に関する書類を作成することを業とする行政書士は、弱い立場に置かれた人の意見を文書という形にして伝えることができる専門家として、「ペンは剣より強し」を体現することができるのではないかと思います。つまり、行政と市民、企業と労働者、上司と部下、先生と生徒、持つ者と持たざる者、イジメている人とイジメられている人など、立場が違うことで自分の意見を言うことが難しいと感じている人の声を、文書という目に見える形にして相手に伝えることができます。
少し前に、小学校で組体操の練習中に後遺症の残るほどの大けがを負った中学生が、馳文科相に宛てて手紙を書いたことがニュースになりました。
▼引用記事:「先生が、絆なんだよ!伝統なんだよ!と言っていた」組体操事故の被害生徒が馳文科相に怒りの手紙
(Yahoo!ニュース, 2016年2月24日, 加藤順子)
手紙の中では、先生が「絆だから! 絆なんだよ!」と言いながら練習をさせていたこと、タワーが崩れてきたときの恐怖、怪我をしたことで人生が変わってしまったこと、国に無責任な検討で済ませないよう強く求める言葉などが、生の言葉でつづられています。
手紙を書いているとき、どんな気持ちだったのだろう・・・。
この中学生は手紙を書いて伝えることができました。でも、自分の考えを言葉にすることができない子どももたくさんいます。このような声なき人たちの声を文書にして伝える。それも、行政書士が果たせるひとつの社会的な役割なのではないかと思います。
(文/藤井祐剛)