ライドシェアサービスを行うときに注意すべき法規制
ライドシェアとは
ライドシェアとは、直訳すると、ライド(乗ること)をシェア(共有)するで、「相乗り」の意味です。カーシェアリングと一見似ていますが、カーシェアリングは車本体を貸し借りする「モノのシェア」であるのに対して、ライドシェアは乗りたい人と乗せたい人を結ぶつける「移動のシェア」です。
代表的なライドシェアサービスとして、2010年6月に米国ではじまった「Uber」があります。スマートフォンやGPSなどのICT技術を活用して、移動ニーズのある利用者とドライバーをマッチングさせるサービスです。高級ハイヤーを配車するUber、低価格タクシーを配車するuberX、既存のタクシーを配車するUberTAXIなどのサービスを提供しています。
Uberのサービスイメージ
(出所)「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」, 総務省, 平成27年3月
ライドシェアサービスと関係する日本の法規制
それでは、米国の「Uber」と同じようなシェアエアリングサービスを、日本で行うことはできるのでしょうか?
ここで問題となるのが、道路運送法第78条です。
道路運送法 第78条(有償運送)
自家用自動車は、次に掲げる場合を除き、有償で運送の用に供してはならない。
- 災害のため緊急を要するとき。
- 市町村、特定非営利活動法人その他国土交通省令で定める者が、次条の規定により一の市町村の区域内の住民の運送その他の国土交通省令で定める旅客の運送を行うとき。
- 公共の福祉を確保するためやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けて地域又は期間を限定して運送の用に供するとき。
つまり、自家用車を使って運送サービスを提供してお金を取るというビジネスは原則として行うことができず、例外的に国土交通大臣の許可を取った場合に認められます。タクシー会社などは、営業許可(国土交通大臣の許可)を取得して営業しています。
この法規制があるため、日本で「Uber」のようなシェアリングサービスを行うことは困難といえます。ちなみに、「Uber」は2014年に日本に進出し、東京でサービスを開始していますが、対象はタクシー事業者として登録されている緑ナンバーの車両に限られています。
日本に登場したライドシェアサービス
Jsutavi
道路運送法第78条は「自家用自動車」を使う場合の規制であり、たとえば、レンタカーについては規制の対象外です。そこに目を付けて、旅先などでレンタカーを利用する人と現地のドライバーをマッチングするサービス「Justavi」が登場しました。
(参考)Justavi:https://www.justavi.com/
notteco
道路運送法第78条は「運送」を有償で行う場合の規制であり、ガソリン代、高速道路代などの実費を割り勘する場合については規制の対象とはなりません。そこに目を付けて、「安く移動したい人」と「ガソリン代などの実費を節約したいドライバー」をつなげる相乗りマッチングサービス「notteco」が登場しました。
(参考)notteco:https://notteco.jp/
ライドシェアサービスの今後の展開予測
規制緩和でライドシェアサービスの展開を認めていく方向で考えるとき、問題となってくるのは無許可タクシー、いわゆる「白タク」です。たとえば、京都では中国人業者や韓国人業者の「白タク」がタクシー業界を悩ませています。
ライドシェアをはじめとするシェアリングサービスは、新しい市場を創り出すビジネスモデルを構築することができる可能性がありますが、同時に、合法的に行うためには、既存産業との共存をどのように考えていくかという視点も必要であるといえます。
ライドシェアサービスをビジネスとして始めるときは、道路運送業法以外にも、たとえば旅行業法など、幅広く関係する可能性のある法規制をチェックして、合法的に行うよう留意してください。