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日本橋、浜町、人形町の「まちの法律家」
2018-06-19

シェアリングエコノミーで起業するときのビジネスモデルの作り方

2018年6月15日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針 2018~少子高齢化の克服による持続的な成長経路の実現~」(骨太方針)の中で、地方創生の推進の1つとして、シェアリングエコノミーの普及促進が述べられています。

6.地方創生の推進
⑶ まちづくりとまちの活性化
まちの活性化に向けて、まちづくり推進体制の強化や波及効果の高い民間投資を促進するとともに、シェアリングエコノミーについて、消費者等の安全を守りつつ、イノベーションと新ビジネス創出を促進する観点から、その普及促進を図る
 経済財政運営と改革の基本方針2018」, 内閣府ホームページ

シェアリングエコノミーを日本語に直訳すると「共有経済」となり、難しいもののように感じます。しかし、実は多くの人が意識せずに行なっていることもあり、それほど特別な概念ではありません。

総務省は、平成27年度情報通信白書の中で、次のように定義しています。

「シェアリング・エコノミー」とは、典型的には個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービスであり、貸主は遊休資産の活用による収入、借主は所有することなく利用ができるというメリットがある。貸し借りが成立するためには信頼関係の担保が必要であるが、そのためにソーシャルメディアの特性である情報交換に基づく緩やかなコミュニティの機能を活用することができる。シェアリング・エコノミーはシリコンバレーを起点にグローバルに成長してきた。PwCによると、2013年に約150億ドルの市場規模が2025年には約3,350億ドル規模に成長する見込みである。
(出所)「平成27年度版 情報通信白書」, 総務省

つまり、場所、車などの目に見えるものでも、スキルのように目に見えないものでも、自分が「余っているもの」を必要としている人に貸し出すことで対価を得るサービスです。従来から、「余っているもの」の貸し借りは知人間では行われてきましたが、対価を取るビジネスではありませんでした。
近年、ソーシャルメディアの台頭により、インターネット上に様々なプラットフォームが生まれ、直接の知人ではなくても信頼性を担保できる可能性が広がったことから、ビジネスとしてのチャンスが生まれてきました。

まとめると、シェアリングエコノミーがビジネスとして成立する要件は次の3つと考えることができそうです。

① 自分に「余っているもの」がある
② その「余っているもの」に価値を感じる人がいる
③ その人と自分をつなぐプラットフォームがある

ここから、シェアリングエコノミーで起業すると想定した場合に、どのようにビジネスモデルを具体化していけばよいか探ってみます。

1.自分に「余っているもの」を発見する

まず、相手にシェアするもの、つまり、自分に「余っているもの」を探します。もちろん、相手が価値を感じるものでなければ対価を得ることはできません。
しかし、この段階では、ビジネスになるかどうか?!と深く考えすぎず、「余っているもの」ならなんでもよい!くらいの潔さで、ノートに書き出すなどしながら、アイデアをできるだけ多く出してみることがポイントです。

このようなアイデア出しをするとき、手法として、ブレインストーミングと親和図法(「KJ法」ということもあります。)を使うと、思考の整理がしやすいです。
※ アイデア出しの手法については、別記事でまとめます。

2.誰が価値を感じるか?の仮説を立てる

自分に「余っているもの」を見つけたら、次に、誰がどういう価値を感じるか?を想像します。たとえば、民泊だったら「空いている部屋」に対して「旅行者が安く泊まれる」という価値を感じます。カーシェアなら「使っていない車」に対して「自家用車を持っていない人が使いたいときだけ車を使える」という価値を感じます。

顧客にとっての価値を想像する前提として、経営学者のピーター・ドラッガー(1909年‐2005年)は、次のように言っています。

「顧客にとっての価値は何か?」と常に考えよ。
「顧客が価値があると考えるものはあまりに複雑であって、彼らだけが答えられることである。憶測してはならない。」
顧客の元へ行って、答えを求める作業を体系的に行わなければならない。

つまり、顧客がどんな価値を感じるか?は、どんなに想像したとしても、直接本人に聞かない限りは分からないということです。だからこそ、単なる”思いつき”で想像の手を止めず、データ、事例や様々な情報を集めて、”仮説”を立てることが重要です。

ここまでのプロセスを丁寧に検討することで、「余っているもの」を「誰」に「どういう価値」として提供するかという事業の軸が固まります。

3.利用できるプラットフォームを検討する

次に、いよいよ利用するプラットフォームを探します。民泊のAirbnb、スキルシェアのクラウドワークスのように、「余っているもの」がすでにシェアリングエコノミーが成立している領域のもので、かつ、既存のプラットフォームが出来上がっている場合には、そのプラットフォームを利用することが最も効率的です。

一方、プラットフォームが出来上がっていない場合には2つの方法が考えられます。1つは、自力でプラットフォームを構築することです。しかし、これにはかなりの時間とお金の投資が必要であり、ひとりで小さく起業しようと考えている方には不向きです。もう1つは、Facebook、InstagramなどのSNSを活用することです。SNSによるマーケティングは一時期ほどの効果が出なくなっているとも言われていますが、小さく起業する場合には、今でも十分なマッチング効果があります。

4.事業化が法規制に引っかからないか確認する

シェアリングエコノミーの領域で事業化する場合、自分の「余っているもの」を使うだけだから、何の規制もなく自由にビジネスを行ってよいはずと思い込んで、知らず知らずのうちの違法なサービスを提供しているケースがあります

たとえば、一例として、既存のシェアリングサービスも、次のような法令の規制を受けます。

シェア形態 主な関連法令
自動車のシェア(ライドシェア) 道路運送法
自動車損害賠償保障法
旅客自動車運送事業運輸規制
自動車のシェア(カーシェア) 登録道路運送法
自動車損害賠償保障法
道路運送車両法
宿泊所(自宅の一部) 旅館業法
旅行業法
観光ガイド 通訳案内士法
道路運送法
旅行業法

シェアリングサービスは、新しい市場を創り出すビジネスモデルを構築することができる可能性があります。他方、新しい市場であるがゆえに法整備が行き届いてなく、合法的に行うためには、既存産業との共存を考えていく視点も必要であるといえます。

斬新なアイデアに魅了されて危ない橋を渡ろうとせず、専門家に相談するなどして、必ず合法的な事業をするよう心掛けることが大切です。

5.活用できる資金調達の手段を検討する

シェアリングサービスは、やり方によっては初期投資を抑えて開始することも可能です。たとえば、民泊でも古民家を改装するような大規模のものはそれなりのお金がかかりますが、自宅の一室を利用して始まる場合には、少ない予算で始めることができます。

自己資金だけでは足りない場合には、補助金・助成金や融資について検討します。開業するサービスの内容や場所によって、活用できる制度は異なりますが、起業時に使える主な資金調達手段として、次のようなものがあります。

補助金・助成金

  • 【全国】平成30年度 地域創造的起業補助金(創業補助金)|中小企業庁
    詳細はこちら
  • 【東京都】平成30年度 創業助成事業|公益財団法人東京都中小企業振興公社
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創業融資

この他にも、シェアリングエコノミーは地方創生や地域活性化の分野に貢献する可能性が高いことから、国や自治体の様々な補助金・助成金や無料相談等の支援制度があります。起業時にしか申請できないものもありますので、国や自治体、または、専門家に相談することにより、最善の準備で起業ができます。

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