toggle
日本橋、浜町、人形町の「まちの法律家」
2016-10-13

【コラム】コレクティブ・インパクト

statue-1286468_960_720

米国で提唱された「コレクティブ・インパクト」(Collective Impact)という概念が、世界的な広がりを見せています。

コレクティブ・インパクトとは、政府、企業、NPOなどが、ある社会的な課題を解決するために協働し、インパクトを創出することを意味します。異なるセクターに属する組織がコラボレーションし、社会的課題を解決する試みは、新しいものではありませんが、コレクティブ・インパクトが従来のそうした取組と異なるのは、次の5つの条件を有する点です。

1.共通のアジェンダ(Common Agenda)
— 参加者間でビジョン、課題認識のズレがない。

2.評価システムの共有(Shared Measurement Systems)
— 共通の活動報告・評価システムにより、効率化や活動の質の向上につながる。

3.相互に強化し合う活動(Mutually Reinforcing Activities)
— それぞれの得意な分野で能力を発揮しながら、相互に協働する。

4.継続的なコミュニケーション(Continuous Communication)
— 月1回又は2回の定期的なミーティングの機会を設ける。

5.活動をサポートする組織(Backbone Support Organization)
— 参加する個々の組織とは別に、専業のスタッフ組織を置き、プロジェクト管理、データ管理、ファシリテーションを行う。

超高齢化、少子化、過疎化、格差社会、子どもの貧困など、たくさんの社会課題を抱える日本は「課題先進国」と呼ばれます。一方、行政は縦割りの組織構造と税収減で問題解決力を失いつつあり、企業は収益と地域課題の解決を両立する手法を模索中であり、NPOは慢性的に資金と人材が不足しています。このような状況を背景に、日本でもコレクティブ・インパクトの発想は、今後ますます重要になっていきます。行政書士と結びつけて考えると、市民と行政の架け橋として、地域をコーディネートする役割を担うことが期待されていくと思います。

<参考文献>
John Kania & Mark Kramer, “Collective Impact “, Stanford Social Innovation Review, Winter 2011
http://ssir.org/articles/entry/collective_impact

関連記事